標本調査の注意点

標本調査はよく実施されている市場調査の方法の一つですので、特に気をつけることなく行っているかもしれません。しかし、標本調査には重要な注意点があります。この記事では、標本調査を初めて実施する場合も考慮し、基礎的な部分からメリットやデメリットまでご紹介します。注意点についても詳しくご紹介しますので、標本調査をするときに活用してください。

 

【標本調査とは】

標本調査は、全数調査とよく対比される市場調査の方法の一つです。ある調査対象の集団があった場合、その全員に対して調査を実施するのが全数調査です。それに対して、標本調査では全体の中の一部に対して調査を行います。サンプル調査と呼ばれる場合もあり、選ばれた一部のことを標本やサンプルと呼ぶのが一般的です。全体の傾向を掴みたいときに、必ずしも全員に調査をしなくとも良い場合があります。全体を代表するようなサンプルを集めて調査すれば、全体がどのような傾向を持っているかを理解できると考えられるからです。このような考え方で、適切なサンプルを集めて調査するのが標本調査です。

 

【標本調査の分析方法】

標本調査では、全体に対して何パーセントがどのように回答したかという形で集計をするのが一般的です。例えば、1,000人の団体の中から100人を無作為に選んでサンプルとし、仕事のやりがいについて4段階評価をしてもらったとします。調査の目的としては、全体のどのくらいの人が仕事にやりがいを感じているかを調べ、仕事の内容や割り振りなどを見直すことだとします。このようなサンプル調査をした結果として、4を選んだのが50人、3を選んだのが30人、2を選んだのが10人、1を選んだのが10人だったとすると、全体を見たときにも4が50%、3が30%、2が10%、1が10%を占めると考えることが可能です。このような形でサンプルにおいて占める割合を調査し、全体に対して外挿するのが標本調査の分析方法です。

 

【標本調査をする際の準備事項】

標本調査をする際には、サンプルの大きさと抽出方法を検討する準備が必要です。基本的には全体を代表するサンプルを無作為に抽出することで標本調査を実施しますが、大きな偏りがあると調査の目的から外れてしまうこともあります。例えば、900名が男性、100名が女性の集団に対して無作為抽出をしたら、サンプルになったのが全員男性だったという可能性もあるでしょう。そうなると、女性の意向が反映されていない標本調査になってしまいます。そのため、性別や年齢などの影響があると考えられる調査では、それぞれの属性について十分な人数が調査対象になるようにサンプルの大きさを調整するのが一般的です。特定の集団をサンプルに含めるような意図的なサンプルの設定をする有意抽出による標本調査もできますが、サンプルの取り方に客観性や網羅性があるかを慎重に吟味することが必要になります。

 

【標本調査でわかること】

標本調査をすると、少ない調査量で全体の傾向を把握することができます。国民全体を対象とする調査のように、莫大な人数の母集団がいる場合には全数調査を実施するのは困難です。しかし、標本調査なら数千人や数万人の調査でも全体の意向を反映した調査結果を手に入れることができます。

 

【標本調査のメリット】

標本調査のメリットは、全数調査に比べて実施にかかるコストを抑えられることです。調査対象の数が減ることから単純に費用という意味でのコストも削減できますが、時間や労力も軽減できます。迅速に結果が欲しいときや費用を抑えなければならないとき、実施に割ける人材の数が少ないときなどに有効な調査方法です。特に母集団が大きくて全数調査をするのが難しい際に効果を発揮します。また、既に存在する統計データからさらに大きい母集団での傾向を推測することもできます。関東地方で実施したデータに基づいて、日本全国での傾向を掴むといったことも地域による偏りが問題にならない調査目的であれば可能です。

 

【標本調査のデメリット】

標本調査のデメリットは母集団の一部をサンプルとして調査するため、サンプルの取り方によっては全体の意向を反映した結果にならないという点です。前述のような関東地方での調査データから全国での傾向を考えると、地域による考え方の違いが問題になりがちです。全国でのデータを知りたい場合には、各地からサンプルを集めて調査をすることが必要になります。性別や年齢なども考慮して、可能な限り全体をカバーするようにサンプルを選ばなければ信頼性が低くなります。結果として、全数調査とほとんど変わらないくらい大きいサンプルにしなければならない場合があるのもデメリットでしょう。

 

【標本調査を行う際の注意点】

標本調査をするときにはサンプルの大きさと抽出方法を明確に定義してから実施し、集計の途中や分析の間にサンプルに操作をしてはならないのが原則です。調査結果として異常値を示すサンプルがいくつか見受けられると、除外して調査結果をまとめようとしてしまいがちです。しかし、このような恣意的な操作をしてしまうと全体像を把握することはできません。サンプル数が少ないために異常値に見えたものの、全数調査をしてみると間を埋めるような回答をする人が多くなり、特に異常値に見えなくなることもあります。もし異常値を示す回答があった場合には、サンプル数を増やして再調査を実施するなどの工夫をしましょう。

 

【標本調査の活用方法】

標本調査の活用例として多いのは、全数調査が困難な大きい母集団を対象とするものです。都道府県レベルでも全数調査を実施するのは難しいため、その中から無作為に抽出をして調査が行われています。全国を対象とする調査では47都道府県のそれぞれから人口に比例した数のサンプルを取ったり、都道府県の中で10前後の地区に分けてその中から人口に比例するサンプルを取得する例があります。このようにして、地域の選び方を全体の中からランダムに選び、サンプルの大きさをそれぞれの人口に応じた数にすることで全体を反映する調査結果を得やすくしています。

 

【標本調査のまとめ】

標本調査は、全体の中から一部をサンプルとして取り出して実施する市場調査の方法です。全体を反映する集団をサンプルとして抽出することができれば、少ないコストで全体の傾向を掴むことができます。調査の際には無作為抽出と有意抽出を組み合わせて、全体を代表とする適切な集団を選び出すことが重要です。また、異常値を除外してしまうと全体を反映した結果になりませんので注意しましょう。

お電話でのお問い合わせ(法人さま向け)03-6228-0163