ABM(アカウントベースドマーケティング)の活用方法

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、企業単位でアプローチを行うマーケティング手法です。ITツールが進化したことを背景に、主にBtoBビジネスで有効活用が進んでいます。この記事では、ABMの分析方法や導入準備などの概要、メリット・デメリット、活用方法について解説します。ABMについての基礎知識を知って、自社施策に生かしましょう。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)とは】

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、顧客を企業単位で管理することで、効率的なアプローチを行うマーケティング手法です。企業単位のアプローチは従来から存在する手法であり、特に目新しいところはありません。しかし、現実的には個人を対象としたマーケティングに近い側面がありました。なぜなら、企業担当者と営業担当者の信頼関係やつながりなどを軸にして、個人ベースのマーケティングが行われてきたからです。あるいは、市場や業種などの大きな枠組みのなかで、マーケティングが実施されてきたからです。これに対して、ITツールを活用したABMは、オンライン・オフラインを問わず、複数のチャネルから顧客企業を調査し、自社の複数の部署からアプローチします。企業ベースでマーケティングを行うことで、取引先の担当者が変わったときも関係を継続しやすく、また、取引先の他部署との商談に結びつけやすい傾向があります。こうしたことからABMは、契約成立までの期間が長く、顧客企業との関係維持が重要なBtoBビジネスに向く手法です。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)の分析方法】

ABMの分析で基本になるのは、顧客企業のポテンシャルとステータスです。つまり、顧客企業が自社の売上に対してどの程度のポテンシャルを持っているかについてと、顧客が新規顧客なのか優良顧客なのかなどについてのステータスを分析します。これらを分析して企業ベースの顧客リストを作成することが、ABMの施策の土台となるからです。広範囲の分析が必要であるため、ABMでは経営戦略や事業戦略で用いるマーケティングのフレームワークを活用します。具体的には、自社の現状分析に使われる3C分析、ターゲットを絞りこむためのSTP分析、業界・競合他社の分析に適した5forces分析などを用いることが一般的です。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)をする際の準備事項】

ABMの導入前に重要な準備は、組織の意識改革と必要なITツールの整備です。ABMではマーケティング部や営業部、カスタマーセンターなど、複数の部署が一体になって取り組まなければ、十分な効果を発揮できません。例えば、営業部が従来の訪問営業にこだわってしまえば、ABMは有効に機能しないでしょう。このようなことにならないためには、ABMの意義や目的について、企業内で意識を統一しておく必要があります。また、ABMを実現するためのITツールの導入も必要です。BtoBビジネスでABMが注目されるようになったのは、ABMツール、MAなどと呼ばれるITツールの普及があるためです。ABMで分析する情報は膨大なので、ITツールの導入が欠かせません。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)でわかること】

企業単位で顧客を分析するABMでは、個人ベースの顧客理解では得られない全体像がわかります。例えば、従来の営業手法では、営業部員がもらった名刺や営業日誌などが主な情報源になるかもしれません。これに対してABMは、自社のランディングページに顧客企業からいつアクセスがあったか、カスタマーセンターへのクレーム履歴など複数のチャネルから情報を収集します。つまり、コンタクトポイント中心だった情報管理がABMによって多角的になり、結果として顧客企業全体が持つ課題や問題点を総合的に把握できます。また、同様に複数のチャネルを解析することで、案件がどのフェーズまで進んでいるのかについても可視化が可能です。このように現状分析の精度が高まれば、どの企業に広告費や人件費を投入するべきかについての経営戦略も決めやすくなります。

 

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)のメリット】

ABMには、マーケティングの効率化、組織力の向上、効果測定や戦略立案がしやすい、という3つのメリットがあります。それぞれについて解説します。

 

■マーケティングを効率化できる

企業単位にターゲットを絞り込むことで、アプローチ方法を決めやすくなります。また、受注確度が高い企業に絞って営業活動をすることで、コストと時間を効果的に配分できます。結果として、ROI(Return On Investment:投資利益率)の向上を達成できる企業も少なくありません。

 

■組織力の向上

ABMを導入すると、必然的に部署間の結びつきが強まります。例えば、営業部がマーケティング部の意図を正しく理解できるようになります。また、マーケティング部がカスタマーセンターからの顧客の声を直接知ることにもつながるでしょう。こうしたことで、各部門が同じ方向性を共有し、組織的なマーケティングを行えるようになります。

 

■効果検証や戦略立案をしやすい

ABMでは通常、ABMツールやCRM、SFAなどのマーケティングツールを用います。そのため、膨大なデータであっても、分析や仮説検証などの目的に合わせて抽出し活用できるようになります。そのため、従来は経営陣の経験や読みに頼っていた効果検証や戦略立案を、定量的に実施しやすくなるでしょう。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)のデメリット】

ABMには、成果が出るまで時間がかかりやすいこと、顧客の規模が小さい場合に効果が出にくいデメリットがあります。

 

■成果が出るまで時間がかかる

ABMでは複数のチャネルから多角的に顧客企業の情報を収集します。そのため、有効な分析ができる情報量に達するまでに時間がかかることがデメリットです。また、マーケティングツールを導入して運用が軌道に乗るまでにも、ある程度期間が必要です。

 

■顧客企業が小規模な場合は不向き

小規模な事業者を対象としたBtoBでは、ABMのメリットが発揮しにくい傾向があります。このような場合、顧客担当者と直接コンタクトして得られた情報の重要度が高く、多角的に分析する意味があまりないからです。かえってABMの施策にかかる負担が増えることがあります。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)を行う際の注意点】

ABMを導入する前には、部署間の関係が悪化する可能性や、売上が減少する可能性に注意しておきましょう。

 

■部署間の関係が悪化することがある

ABMには部署間の連携が不可欠です。協力体制が整えば組織力の向上につながりますが、逆に意見が対立して関係が悪化する場合があります。例えば、優良顧客かどうか判定する基準がマーケティング部と営業部で異なることは、よくあることです。事前にABMの導入目的や活用方法について、部署間で理解を共有しておきましょう。

 

■ABMによってアプローチを変えないほうがよいこともある

ABMは企業という単位でカスタマイズしたアプローチをするための手法です。しかし、個々にアプローチを変えない方が、かえってよい結果を生むこともあります。例えば、自社商品の数が少なく市場における強みが明らかであるなら、顧客に合わせることなくストレートに商品を訴求したほうが売上につながることがあるでしょう。

 

【ABM(アカウントベースドマーケティング)の活用方法】

ABMは新規顧客開拓から既存顧客へのアップセル・クロスセル、取引先企業の他部署へのビジネス展開に活用できます。それぞれについて解説します。

 

■精度の高い新規顧客開拓

ABMの企業データは、企業を人物として考えたとき、特定の関心を持つターゲット層やペルソナとして活用できます。したがって、似たような状況に置かれた企業や類似のニーズを持ちそうな企業に同じアプローチを採用することで、新規顧客開拓が成功しやすくなるでしょう。

 

■アップセルやクロスセルに活用する

顧客ニーズをより詳しく知ることで、上位の製品を購入してもらうアップセルがしやすくなります。また、顧客の潜在ニーズを察知してオプションやセット商品を提案することも可能です。ABMとアップセル・クロスセルの施策は関連付けやすいため、有効活用しましょう。

 

■取引先の別部署への展開

取引先企業と信頼関係を築けると、他部署の担当者を紹介してもらえる可能性が高まります。同じ商品を展開できることもあれば、違うニーズを聞き取って別の自社商品を提案することもできます。

 

【ABMで顧客ニーズをくみ取り業績向上を目指そう】

企業単位でマーケティングを行うABMが、BtoBビジネスを中心に活用されています。ABMを有効活用するには、部署間の協力と、膨大なデータを扱えるITツールの導入が欠かせません。ABMを導入することで、マーケティングの効率化や組織力の向上などが見込めます。顧客ニーズを的確に把握し、売上向上を達成するためにも、ABMを有効活用していきましょう。

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