ポートフォリオ分析の活用方法
ポートフォリオ分析はマーケティング分析の一つとして幅広い業界で活用されていますが、具体的な理論や方法を理解できていない人もいるでしょう。この記事ではポートフォリオ分析の基礎を端的に解説します。その上で、モデルケースを用いてポートフォリオ分析の活用事例を紹介するのでポートフォリオ分析を有効活用できるようにしましょう。
ポートフォリオ分析とは商品やサービスなどの価値を判断する上で有用な情報を取得できるマーケティング分析の手法です。米国のコンサルティング会社によって生み出された分析フレームワークで、市場成長率とマーケットシェアという二つの指標からプロダクトポートフォリオマネジメントを行えるようになるシンプルな枠組みになっているのが特徴です。
ポートフォリオ・モデルにはどのような種類があるのかと疑問に思うかもしれませんが、基本的には創始者が考えた基本形が踏襲されています。ポートフォリオ分析を正しく活用できるようになるためには分析に必要なパラメーターの特性や求め方、戦略カテゴリーの種類や特徴を理解することが欠かせません。基礎的な理論を概説するので具体的なイメージを持てるようになりましょう。
■成長/シェア・マトリックス
ポートフォリオ分析では成長/シェア・マトリックスによる分析をするのが基本です。これはある製品やサービスについて市場成長率とマーケットシェアを求め、縦軸に市場成長率、横軸にマーケットシェアを取って平面に表記する方法です。視覚的に表現することで分析を容易にするのが目的になっています。重要なのは市場成長率とマーケットシェアの求めることですが、どのようにして算出したら良いのでしょうか。
・市場成長率
市場成長率の算出にはいくつかのアプローチがありますが、典型的なのは今年度の市場規模を前年度の市場規模で割る方法です。市場規模はマーケティング会社による独自調査や、公的機関による統計調査のデータを使って求めることができます。製品やサービスの特徴に応じてどの市場を舞台にするかを考えるのが重要で、細分化された市場で個々に分析することも、広く考えてトータルでの状況を分析することも可能です。
・マーケットシェア
マーケットシェアは市場成長率を算出するときに用いた市場規模と、分析対象とする製品やサービスの売上高から算出可能です。マーケットシェアは売上高を市場規模で割ることで計算できます。
■戦略カテゴリーの分類
ポートフォリオ分析では成長/シェア・マトリックスにプロットをした上で、四つの象限に分けて分析をします。この際にどの象限に含まれるかによって分類される戦略カテゴリーが異なります。問題児、スター(花形)、金のなる木、負け犬という四つのカテゴリーについて詳細を解説します。
・問題児
問題児は市場成長率が高いけれどマーケットシェアは低いカテゴリーです。資金投資をしなければシェアの拡大が難しいものの、現状のまま維持していてはさらにシェアが低くなるリスクがあります。市場成長率が高いので魅力的ですが、資金を投下してから市場成長が止まるリスクもあるのが問題点です。
・スター(花形)
スターは市場成長率もマーケットシェアも高いカテゴリーです。市場成長もしていてシェアも獲得していることから、現在のポジションの維持向上を目指していくことが望まれます。市場成長率が低下した際の対応に留意しつつ積極的な投資による拡大を図るのが効果的です。
・金のなる木
金のなる木は市場成長率が低いけれどマーケットシェアは高いカテゴリーです。市場成長率が低いので新規参入が少なく、シェアを既に獲得しているのでマーケティングコストを抑えやすいのが魅力です。事業利益を最も生み出しやすい一方、市場が成長していないので利益を拡大するのは難しい傾向があります。
・負け犬
負け犬は市場成長率もマーケットシェアも低いカテゴリーです。市場も成長していなくてシェアも取れていない状況では社内コストがかさんでいるだけで事業利益につながりにくいでしょう。そのため、事業整理の際に撤退を検討すべきカテゴリーとして位置付けられています。
ポートフォリオ分析をモデルに基づいて行ってみましょう。A社では製品系列として石油原料、一般樹脂、エンプラを持っていたとします。それぞれの市場成長率を見てみると5%、10%、30%となり、マーケットシェアを計算してみると10%、40%、10%だという結果が得られたとしましょう。成長/シェア・マトリックスにプロットしてみると石油原料は負け犬、一般樹脂は金のなる木、エンプラは問題児に相当しているといった解釈をすることが可能です。今後の事業戦略として一般樹脂を事業基盤として維持し、問題児のエンプラへの事業投資を積極的に行って花形を目指すといった方策を考えられるでしょう。
応用事例として、他社のポートフォリオ分析によって市場研究をする方法を確認しておきましょう。マーケットシェアは他社の公開しているIR情報から調査できるので、そのデータを成長/シェア・マトリックスにプロットしてみることで、その企業の事業や製品に関するポートフォリオがわかります。競合他社の分析を通して戦略を考えることが可能になります。類似製品が花形から金のなる木に落ち込んでいる様子があったときに、自社の金のなる木にある製品に資金投資をしてシェアを獲得するのが典型的な方策です。
ポートフォリオ分析は限りある経営資源を最適化するために有効な手法です。どの製品やサービスにコストをかけてマーケティングをしていくかを考え、事業利益を最大化するためのリソース配分をすることができるようになります。事業規模で考えることも、個々の製品ポートフォリオを分析することもでき、場合によっては生産拡大や製造停止などの提案すら行うことができるのが特徴です。