PSM分析(価格感度メーター)とは

マーケティング戦略や経営戦略を考える上では様々な分析のフレームワークが活用されています。その一つとしてマーケティングミックスの段階でよく用いられているのがPSM分析です。PSM分析とはどのようなフレームワークを持つ分析方法なのでしょうか。この記事ではPSM分析の概要からフレームワーク例まで詳しく説明していきます。

PSM分析とは

PSM分析とはPrice Sensitivity Measurement分析の略称で、価格感度センサー、価格感度分析、価格感度測定などとも呼ばれています。この分析手法はマーケティングミックスの四つの指標であるProduct、Price、Place、Promotionのうち、Price、すなわち価格の影響について分析するための手法です。消費者が商品やサービスの価格に対してどのような印象を持つかを測定することによって、価格に対する四つの指標を導き出すフレームワークになっています。四つの指標とは上限価格、妥協価格、理想価格、下限価格であり、商品やサービスを市場に出すための価格戦略を立てる上で欠かせない情報を手に入れることができるのが特徴です。

PSM分析の説明

PSM分析は商品やサービスに関わる価格についての情報を、マーケティング対象とする地域の消費者を対象としたアンケート調査を行うことによって獲得します。地域ごとに実施して集計できることから、マーケティングミックスのPlace、すなわち場所に関する情報も同時に取得できると言えます。実際に行うアンケート調査はとてもシンプルで、以下の四つの質問に答えてもらうだけというのが原則です。

1.これでは高すぎて買えないと思い始める価格はいくらか
2.これなら高いが買えなくはないと思い始める価格はいくらか
3.これなら安いと感じ始める価格はいくらか
4.これでは安すぎて品質が心配になると思い始める価格はいくらか

このアンケート調査を集計して、1~4のそれぞれについて横軸に価格、縦軸に消費者の割合をプロットしていきます。1と2については右上がりのグラフになり、3と4については右下がりのグラフになります。この四本のグラフの交点が四つできますが、それらに対応する価格が前述の価格に関わる四つの指標に対応する仕組みになっているのがPSM分析の特徴です。

上限価格…1と3の交点
妥協価格…2と3の交点
理想価格…1と4の交点
下限価格…2と4の交点

そして、上限価格と下限価格の間を受容価格帯あるいは許容可能価格(RAP)と呼び、この地域における適切な価格設定はこの価格帯にあると判断されます。実際に市場に出すときにはこの価格帯に収まるようにするのが原則で、マーケティングの方針に応じて妥協価格や理想価格を用いることもあるというのが実態です。

PSM分析でわかること

PSM分析でわかるのは、あるターゲットを対象として商品やサービスを販売するときに妥当な価格設定をするための価格範囲です。PSM分析ではターゲットとする消費者の母集団から代表的な人たちを無作為に抽出してアンケートを行い、買いたいか買いたくないか判断する価格を四つのパターンで聴き取ります。そのため、消費者視点でどのくらいの価格帯で販売されていれば買う人が多いかを評価することが可能です。母集団の取り方による違いの分析もできるので、男性と女性の差や年齢層による違い、さらには国による価格差などもわかります。新商品の最初の販売エリアをどこにするかといったマーケティング戦略を考える上でも重要な情報が手に入ります。

最近では販売方法も多岐にわたるようになりました。その影響も評価することができるのはPSM分析の特徴です。ある商品を販売するときにはパッケージ入りの商品を店頭に置いて販売することもあれば、インターネット通販でいくつかの写真と説明書きを並べて販売することもあります。同じシチュエーションを作ってアンケートを実施することにより、販売方法に応じた妥当な価格設定に関する情報を消費者から引き出すことができます。

ただし、気を付けなければならないのが顧客の持つ相場観の影響です。例えば、高級化粧水の販売価格を考えるためにPSM分析を実施したとしましょう。その調査対象としたターゲットが普段は化粧水を使わず、オールインワン美容液などで済ませていると化粧水の相場がわからない可能性があります。すると付ける価格が大きく外れた値になってしまって参考にならないのです。購入候補となるターゲットを絞りこみ、その中からサンプルを抽出してアンケート調査を実施することによって正しく妥当価格帯を推定することができます。

PSM分析のフレームワーク例

インターネットによるアンケート調査を活用したインターネット販売商品のPSM分析について具体的に考えてみましょう。商品の写真をいくつかの角度から撮影し、アンケートではその写真に基づいて四つの指標に関する質問を投げかけます。想定販売価格が数千円程度という見込みなので、0円から5000円という表示をしてアンケート対象者が自由に価格を選べるようにしておきます。このようにして準備をしたアンケートを日本に在住で20歳以上60歳以下の男女という形でアンケートを実施するのが方針です。どんな商品の調査をしているのかをわからなくするため、ダミーの商品も含めて20商品についての調査をしました。

得られた結果について0円以上500円未満、501円以上1000円未満という風に500円刻みにして、それぞれの価格帯に何%の回答があったかを集計していきます。そして、横軸に価格、縦軸に割合としたグラフを作成して四つの項目についてグラフを描くと四つの交点を作ることが可能です。その交点から上限価格が8000円、妥協価格が6500円、理想価格が5500円、下限価格が4500円といった結果が出てきます。このことからこの商品は4500円から8000円の間で販売するのが妥当だと判断できるのです。市場価格として想定していた5000円よりも理想価格が高いことから通常価格を6000円として、販売初期は売り込みのために5500円で販売するといった戦略を立てることができます。

まとめ

PSM分析は商品やサービスの価格について消費者の視点ではどのくらいにするのが妥当かを推定するための分析方法です。販売価格を設定する際に重要な上限価格や下限価格、妥協価格や理想価格についてアンケート調査に基づく情報が得られます。アンケートの取り方によって販売方法の検討もできるため、マーケティング戦略を立てるための重要な手法です。

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