潜在クラス分析とクラスター分析の違いとは
潜在クラス分析は、幅広い分野で活用されている統計的な分析手法です。マーケティングなどで活用されている似た分析手法としてクラスター分析がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。この記事では、潜在クラス分析の特徴・メリットやクラスター分析との違い、潜在クラス分析を行う際の注意点などについて紹介します。
潜在クラス分析とは、数値などの量的データだけでなくカテゴリカルな質的データを潜在的な変数として、表面上のデータを統計的にクラス分けする手法です。様々な性質の変数が混在した膨大なデータから分析することができるので、従来の分析手法に比べてより幅広い分野での活用が期待できます。また、分析によって必ず特定のクラスに分類されるのではなく、統計情報を基に分析結果を各クラスへの所属確率として算出するのが特徴です。
潜在クラス分析と似た分析手法として、クラスター分析が挙げられます。クラスター分析とは、量的データを使って集団の中から距離の近い似たものの集落をつくりクラスターとして分類する手法で、分類における測定基準は数多くありますがその結果は統計的な意味を持たないのが特徴です。それに対し、潜在クラス分析では質的データを含めた分析が可能であり統計に基づいて所属確率を算出するので、これらの点で大きな違いがあるといえます。
潜在クラス分析の最大の特徴は、分析における変数として量的データと質的データを扱うことができ、さらにそれらが混在した状態のデータから隠れた共通点を探してクラス分けすることができるという点です。従来の連続した数値データなどを基準とした分析手法と比較して自由度が高く、様々なデータに対応できることから汎用性の高い手法であるといえます。また、統計的な基準によりクラス分けをして、その分析結果が所属確率として算出されるので、個々の特徴や多面性を反映した分析結果を得られるのも大きな特徴です。
潜在クラス分析は、分析モデルの一種であり、様々な変数を含んだモデルについて統計に基づいたセグメンテーションを行います。そのため、分析結果のモデルは統計的な意味をもち、各クラスへの所属確率を表すものとなるのが特徴です。分析モデルの決定には、クラス数を増やしていき、適合度の高いモデルを探す必要があります。
潜在クラス分析では、使うソフトによって必要な工程は変わりますが、簡単な流れとしては、まずもととなるデータを用意してシステムで解析し、分析対象を適切なクラス数に分類します。このクラス分析を行うことでそれぞれの対象ごとのクラスへの所属確率を算出します。すべてのセグメントを集計してそれぞれのもつ性別や年齢などのデータを分析し、モデルの傾向をつかむことができます。特定のセグメントに対して既婚か独身かなどさらに詳細な条件を追加して分析することで、より有効なマーケティング戦略に活かすこともできます。
潜在クラス分析には様々なメリットがありますが、そもそも潜在クラス分析を行うことによって、膨大な混ざり合ったデータの中に隠れた共通点のあるセグメントが存在することがわかるというメリットがあります。対象となる個々がもつ特徴によって統計学的に分類されるため、マーケティングや統計など多様な場面で活用が期待できる手法であるといえます。また、潜在クラス分析においては、これまで分析手法として主に活用されてきた因子分析のように連続した変数を使う必要がなく、量的データに加え、例えば商品名や性別といったカテゴリーがバラバラないくつもの質的データを含んだ多項データを変数とすることができます。そのため、対象個人の潜在的な多様性の抽出や思考の変化などを抽出でき、分析結果の活用の幅が広いのも強みです。
潜在クラス分析は統計学的な面でも様々な活用が可能な分析手法で特にデメリットはないといえますが、統計学的な分析一般に共通する問題がいくつか存在します。まず、局所解に陥る可能性があるということです。これは分析の性質上、反復計算を繰り返すことによって最適解でない結果が出てしまう現象です。つぎに、識別可能性の問題があります。基本的に最適なクラス数によって分析が行われますが、クラス数を増やすと識別不能になってしまう対象が出てくるため分析には注意が必要です。
潜在クラス分析を行う際の注意点としては、局所解に到達する可能性を考慮しておくことが挙げられます。そのため、初期値を変えて何度も同じ条件の分析を行い、結果のズレを防ぐなどの対策が必要です。また、クラス数が多すぎたり少なすぎたりすると識別可能性やモデル適合度に問題が生じて分析が上手くできない状態になるため、システムの警告などには注意を配る必要があります。
潜在クラス分析は、個人の特徴の違いなどから分類が可能であることから、様々な違いをもつ国民への社会的な調査など様々な場面で活用されていますが、なかでもマーケティングでの活用が進んでいます。活用の一例を挙げると、消費者の購入データを基にクラス分けをして特定の商品の購入頻度の高いセグメントを割り出し、そのセグメントの特徴の分析を行ってそれをもとにマーケティング戦略をたてるなど、コンビニエンスストアやスーパーで購買率の向上に役立てられています。
潜在クラス分析とクラスター分析の違いをまとめると、そのセグメンテーションの基準の自由度や分析結果が表すものが大きく異なるといえます。潜在クラス分析が、数値データだけでなく質的データを含む様々なデータを変数とするのに対して、クラスター分析は、数値データを変数として個々の距離に基づき分類を行います。また、分析において潜在クラス分析は統計を基にしてセグメントへの所属確率というかたちで結果を出しますが、クラスター分析では特定のセグメントに分かれるまで分類を行いその分析結果は統計学的な意味は持たないという違いがあります。
潜在クラス分析には、量的データだけでなく個々の潜在的な特徴といった質的データをもとに統計的な分析結果を算出できるという特徴があります。クラスター分析と似ている部分がありますが、マーケティングなど様々な分野でより潜在的な部分まで抽出できる分析手法として活用が期待できそうです。マーケティング戦略のひとつとして、ぜひ参考にしてみてください。