デジル分析の注意点

デシル分析はマーケティングにおける顧客分析の手法として頻繁に用いられています。わかりやすくてすぐに使えるのが特徴としてよく知られていますが、デシル分析を使う上では注意点もあります。この記事では顧客分析にデシル分析を用いる際のメリットやデメリットと合わせて、活用時の注意点を解説するので参考にしてください。


デジル分析とは

デシル分析はラテン語で「10等分」を意味する「デシル」という言葉に由来しているマーケティング分析手法です。顧客分析では顧客を10等分して分析するのが特徴で、一般的には顧客の購入金額に基づいて10等分のランク分けを行い、それぞれのランクにおいて顧客層や購入内容などにどのような傾向があるかを分析します。分析結果に基づいて優良顧客を見つけ出したり、商品開発の方策を考えたり、マーケティングの方策を考えたりすることが可能です。顧客分析を通してマーケティングや商品開発の課題を抽出するのを目的として行われる分析手法として着目されています。


デジル分析の分析方法

デシル分析では対象とする顧客の購入金額に基づいて10段階のランク付けを行います。1万人の顧客がいる場合には購入金額順に並べて、1000人ごとにランクを割り振ります。そして、それぞれのランクにおける購入金額の合計額、全体の中での比率、1人あたりの購入金額などを分析して集計するのが一般的です。また、ランクごとにどのような属性の顧客が集まっているかを分析することもできます。

 


デジル分析する際の準備

デシル分析をするためには顧客の購入履歴を準備する必要があります。顧客情報を取得する必要があるため、直接販売を行って誰がいくらの購入をしたかの記録を取らなければなりません。店頭販売や通信販売を使うこともできますが、アプリやECサイトを利用して自動的に集計できるようにする方法もあります。全顧客に対する購入履歴があるとデシル分析によって得られる情報量も多くなり、分析結果に基づいて立てる施策の有効性も高まるのが一般的です。

 


デジル分析でわかること

デシル分析をするとどのような顧客が多額の購入をしてくれているかを見出すことができ、誰をターゲットにしてマーケティングや商品開発をすべきかが明確になります。例えば、デシル分析によって上位の二つのランクに該当する顧客だけで全体の売り上げの60%を占めていたとしましょう。すると、この二つのランクをターゲットとしてマーケティングを実施し、さらに購入を促して売り上げを伸ばすという戦略が考えられます。DMや電話、SMSなどによる営業ではコストがかかるため、ターゲットを絞り込んで売り上げが伸びやすい顧客にアプローチするのが基本です。商品開発でも買ってくれる可能性が高い顧客の願望を叶えられるように方針を立てるのが重要なので、その基礎情報を得られる点でデシル分析が有効活用されています。

 


デジル分析のメリット

デシル分析は購入金額というわかりやすい指標で評価できるため、効果的なマーケティング施策を考えやすいのがメリットです。企業にとって最も重要な売り上げを軸にしている分析なので、具体策を講じた際に効果が出やすい傾向があります。また、顧客の購入履歴に基づいていることからマーケティングの効果測定もしやすいのが特徴です。特にマーケティングのターゲットを絞り込む際に有用な方法で、コスト削減を重視して費用対効果の高いマーケティング施策を打ち出すのに適しています。

 


デジル分析のデメリット

デシル分析では顧客の購入履歴がまとめられていないとすぐに実践できないのがデメリットです。小売店に販売を任せている場合などには顧客との接点がなく、デシル分析をするのが困難になります。直接販売をしているメーカーや販売店では利用しやすい分析手法ですが、顧客との接点がない場合には新たな販売経路を作ることから始めなければデシル分析は使えません。既存のビジネスモデルを変えなければならない場合には労力負担が大きいので注意しましょう。

 


デジル分析の注意点

デシル分析は購入金額という一面で顧客分析をしている点に注意が必要です。顧客分析の目的でデシル分析をするときには優良顧客を見つけ出すのが主な目的になります。しかし、購入価格が高いからといって優良顧客と断定できるとは限りません。少額の取引しかしていなくてもずっとリピートしている顧客も優良と言えるでしょう。逆に一度に大量購入をしただけで、継続的な購入をしていない顧客が高いランクになってしまう場合もあります。過剰在庫が問題になっている商品をよく買う顧客は企業にとって魅力がありますが、単純に購入金額だけを見ていたのではどの商品を買っているかはわかりません。このようにデシル分析だけに頼ってしまうと本当の優良顧客を選び出せないリスクがあるので気を付けましょう。

 


デジル分析とRFM分析の違い

デシル分析と同様にグルーピングによる代表的な分析手法としてRFM分析があります。RFMとはRecency、Frequency、Monetaryの略で、いつ、どのくらいの頻度で、いくらの購入をしたかに基づいてグルーピングをする分析手法です。一般的に購入金額だけに着目するデシル分析と違い、多変量解析になるのがRFM分析の特徴です。そのため、高度な分析技術を求められ、分析の仕方によって得られる情報も異なります。多角的な分析ができる点でRFM分析は優れていますが、直感的にわかりやすい情報を得られる点ではデシル分析が有用と考えることが可能です。

 


デジル分析の活用事例

デシル分析はマーケティングのターゲットを選ぶのに最もよく活用されています。新製品や新サービスの紹介をDMやSMSで行おうとしたときに、全顧客に対して実施するとコストがかさむことは否めません。購入可能性が高い顧客を絞り込むためにデシル分析を行い、購入金額で上位ランクに該当する顧客にだけDMやSMSを送るというのが典型例です。また、製品開発への活用では、最上位のランクの顧客について属性を分析し、年齢層や性別、職業などに応じてペルソナを作り上げ、新しい製品のコンセプトを打ち出しているケースがあります。

 


デジル分析のまとめ

デシル分析は顧客を購入金額に基づいて10段階にランク付けして分析する手法です。企業にとって重要な売り上げに関わる指標に限定した分析なので、高い効果を発揮するマーケティング施策を考えやすいのがメリットです。ただ、顧客の一面しか見ていないため、優良顧客を見逃すリスクがあります。RFM分析などの他の分析手法も併用して分析精度を高めると、さらに効果的なターゲットの選定を行えます。

 

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