パネル調査の活用方法

ビジネスにおいて売り上げを伸ばすためには、市場のニーズを的確に把握することが必要不可欠です。そのために、様々な調査が行わるのですが、その中の一つにパネル調査と呼ばれるものがあります。顧客が何を求めているかを理解するために有効な調査ですので、以下ではその概要を見たうえで、実際に実施する場合のメリットやデメリット、注意点などを紹介していきます。

パネル調査とは

パネル調査というのは、特定の対象者に対して、ある期間の間に何度も繰り返しアンケートを行って、その回答を収集するという調査の手法です。一般的な市場調査は、無作為に選別した対象者に対して、1回だけアンケートに回答してもらうというやり方で実施されるものがほとんどですが、それだと調査を実施した時点での市場のニーズはある程度分かるものの、時系列でみた場合のニーズの変化を読み取ることはできません。そのような単発型の調査と比べると、パネル調査は、同じ人から継続的に回答を得られますので、対象者をある程度増やせば、市場全体のニーズがどのような方向に動いているかが手に取るように分かるというわけです。

パネル調査の対象者の選定の仕方は、調査会社によって一律ではありません。かつては、調査員があらかじめ提供された条件に合致する人を見つけ出してアンケートを依頼するというアナログの選定方法が用いられるケースが多かったのですが、インターネットの普及によりアフィリエイトプログラムなどを通じて募集したグループの中の人々からコンピュータを使ってランダムに選定するといったやり方が増えてきています。謝礼を目当てに調査に協力する意思がある人をあらかじめ集め、性別や職業、年齢などを登録しておいてもらえば、簡単に条件に合う調査対象者を見つけられるようになっているのです。

パネル調査でわかること

パネル調査を実施することによって、調査実施時の市場のニーズに加えて、過去からの市場のニーズの変動が分かってきます。例えば、スマートフォン端末について、調査対象者がどのような機能を求めているかというアンケートをパネル調査形式で実施するとしましょう。その場合に、10年前はアプリの動作がスムーズであることを求める回答が多かったのが、足元ではカメラやビデオ機能の向上を求める回答が増えてきているという結果が得られたということであれば、スマホメーカーとしてはいたずらにハイスペックの端末の開発にリソースを投入するよりも、カメラ機能の改善にフォーカスした製品づくりを行えばよいのです。ニーズの変化をタイムリーに把握しておけば、せっかくコストをかけて新商品を開発して市場に投入した場合に、まったく需要がなくて売れないという事態は回避できるでしょう。

パネル調査のメリット・デメリット

パネル調査には、メリットとデメリットの両面がありますので、それらを正しく理解しておくことが重要です。

#メリット
一つ目のメリットは、同じ対象者に対して繰り返し調査を行うので、その人の行動履歴を時系列的にデータとして蓄積できるという点です。そのようなデータを集めて分析すれば、ブランドスイッチのタイミングやブランドスイッチを行う人の比率といった、競合他社についてのデータも入手可能となります。単発での調査では、このような時間を軸にした分析はできませんので、それができるのはパネル調査ならではのメリットです。また、パネル調査では、一度対象者を決めてしまえば、2度目以降は一から対象者を探す必要がないため、そのための労力やコストをカットできます。効率的に調査を行えるというのも、この調査のメリットであるといえるでしょう。

#デメリット
パネル調査のデメリットとしては、長期間にわたって特定の対象者に調査に協力してもらわなければならないため、1回ごとの調査協力の負荷があまりに大きいと対象者が途中で脱落しかねないという点です。対象者が減ってしまうと、データの継続性が確保できなくなり、正確な調査結果が得られなくなる恐れがあります。そのため、パネル調査を行う際は、対象者への負荷を考えてなるべく簡単に回答できるアンケートを用意するよう心掛けるとよいでしょう。人数が減っていくというのを想定して、最初のうちは少し多めに調査対象者を選定していくといった工夫も必要です。

パネル調査を実施する際の注意点

パネル調査を実施するうえで注意すべき点は、調査対象者のクオリティを維持するということです。単発の調査と違って、何度も同じ人にアンケートに回答してもらわなければならないので、対象者が自分の考えを正しく回答してくれなかったり、適当に回答したりすると、データの正確性が損なわれてしまうからです。そのため、調査を実施するにあたっては、信頼できる対象者を選定できるスキルをもった調査会社に依頼するのが重要となります。

また、アンケートの作りにも工夫が必要です。適当に回答していないかどうかをチェックするために、質問の中に、「ここの回答は3番を選んでください」といったダミー問題を入れて、質問を読まずに回答している人を排除できるようにしておくといったやり方も場合によっては検討すべきでしょう。ダミー問題はあまりに露骨なものだと簡単にバレてしまいますし、数が多すぎると対象者が疑われていると感じて嫌気がさしてしまう恐れがあります。この手の調査に慣れていないという場合には、アンケート作りについても自社で行わずに、調査会社などに委託してしまった方がよいかもしれません。

パネル調査データの活用事例

パネル調査によって得られたデータは、市場ニーズの変化を捉えるために、様々な用途に活用できます。例えば、調査の実施と並行して、何らかのビジネス上の施策を行った場合には、その調査データを基に、その施策の実効性を推し量ることができます。例えば、調査期間中にテレビCMを流した場合に、自社の認知度が上がったという調査結果が得られれば、CMに効果があったと判断できますが、そうでなければあまり効果がなかったと考えられるのです。

また、調査データは、自社が取り扱っている製品の買い替えサイクルを把握するためにも活用できます。例えば、テレビメーカーであれば、テレビの買い替え予定を質問項目に入れておくことで、顧客の買い替えニーズがいつ頃高まるかをある程度推し量ることが可能です。ニーズが高まる時期を狙って新製品を投入すれば、大きな売り上げが見込めるというわけです。

パネル調査を積極的に活用しよう

以上で見てきたように、パネル調査は、他の調査と違って、市場のニーズの変化を把握するのに非常に使い勝手のよい調査手法です。顧客のニーズは時々刻々と移り変わりますので、その変化を把握し損ねて市場の流れに取り残されないようにするために、メリットとデメリットを正しく理解して、積極的にパネル調査を活用するようにしましょう。

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