定量調査の活用方法

マーケティング活動を行う上での調査方法のひとつに、定量調査があります。定量調査はデータを明確な「数字」として集めるため、目で見てわかりやすいデータを集めることができます。しかし、上手く使わなければ思うようなデータが集まらない可能性もあります。今回は、定量調査とはどのようなものか、マーケティングでどのように活用すべきかについて説明します。

定量調査とは

定量調査とは、数値で表現できるデータを集める調査方法です。集めたデータはグラフなどで図示することで分析します。代表的な定量調査としては、国が行う国勢調査などが挙げられます。人口や世帯数、GDPなどを数値化してデータを集め、そこから現在の労働力の状況や経済の状況、少子高齢化の進行具合などを分析結果としています。他にも、マスコミが行う世論調査では「はい」「いいえ」等の選択肢を与えて答えさせる形で調査を行うため、これも定量調査と言えます。

逆に、企業が製品に関するアンケートを募集する際に設問として用意する「意見を自由に書いてください」という項目に関しては、集められたデータを数値化することができません。このような数値化できないデータを集める調査手法は「定性調査」と呼ばれ、人間の価値観や行動理由といった心理的な動きを調べる際に用いられます。

定量調査の特徴

定量調査の最大の特徴は、先述したように取り扱うデータが数値として表現できるものであるという点です。数量や金額はその代表例です。集められたデータを分析する際には、数値を組み合わせることで様々な切り口での分析が可能な点も特徴と言えます。例えば、特定の商品の売上について、調査を行った母数集団の全体でどれだけ売上があったのか、という切り口の他に、男性にはどれだけ買ってもらえたのか、世代別で見た時にどの年齢層に多く買われたのか、といった分析を行うことも可能です。

複数回の調査を行うことで、調査結果の推移を把握することも可能です。第1回目の調査では中年男性が多く購入したが、第2回目以降は徐々に女性や若者の購入も増えてきている、といったように、データ上の数値の推移も分析を行う上での切り口となります。

アンケート調査で定量調査を行う場合は、機械的にデータを集めて分析することが可能な、選択肢を選ばせる形式で調査を行います。先にも述べたような「はい」「いいえ」の二択で答えさせる設問や、1~5でスケール化した中でどれが一番自分の意見に近いかを選ばせる設問、複数の選択肢を与えて当てはまるものを全て選ばせる設問などが定量調査のアンケートで用意されます。

定量調査のメリット・デメリット

定量調査のメリットとしては、調査結果がひと目でわかるという点がまず挙げられます。調査結果を可視化することで、全体像がつかみやすくなります。また、プレゼンテーションの際に定量調査の結果を用いることで説得力を持たせることが可能です。その際に、調査結果をグラフなどで図示することで、視覚に訴えたプレゼンテーションには最適と言えます。

また、調査の際に回答者に手間をかけない点もメリットのひとつです。定量調査で行うアンケート調査では選択肢を選ばせる形式となるのは先述した通りですが、これは回答者にとって、自分の言葉で回答を考えるよりも遥かに負担がかかりません。その結果、回答者からの回答をすぐにもらうことが可能なのです。

その一方で、母数をある程度確保しなければ正確な調査結果を得られないというデメリットも存在します。全体的な母数が少ない場合以外にも、幅広い性別や世代に対して調査を行うはずが、男女比や世代に著しい偏りがある場合、正確性を欠いた調査となってしまいます。他にも、ターゲットを絞りすぎてしまい母数が極端に少なくなってしまうケースもあるため、調査対象は適切な範囲の中に定める必要があります。

また、調査結果を分析する上で、「何故この調査結果となったのか」の分析を行う場合、定量調査だけでは限界が生じるケースもあります。回答者が「何故」その選択肢を選んだのかは、定量調査においては推測や憶測を行うしかありません。回答者の心理的な動きや考え方、詳細な感想などを求める場合は、定性調査に頼らなければならないのです。

そして、定量調査を行う際には、様々な専門知識が必要になる場面があります。例えば、先に述べた「正確な調査結果を得られる母数」はどれだけ必要となるのかを設定したり、結果を数値化した際の分布を分析する上では、統計学の知識が要求されます。また、アンケートをWebサイトで行う場合には、WebデザインやSEO等のサイト運営に必要とされる技術に加えて、トラッキングやアクセス解析などについても知識があることが望ましいです。精度の高い調査と分析を行うためには、これらの知識を予め学習するか、一定の知見を備えた人員を用意するなどの手間がかかるという点も注意が必要です。

定量調査の活用事例

定量調査の活用事例のひとつが、商品のリリース後に行うアンケートです。ある商品を発売する際にアンケート用紙を添付し、その商品を使用した感想についてのアンケートを返送したり、Web上で答えさせることで、商品に対するユーザの評価を調査するというものです。アンケートへの回答を促進するため、回答者にはお礼としてささやかな特典をプレゼントすることもあります。

アンケートによる調査は、新商品の開発が最終段階に入った際にも用いられます。実際に商品をイベント会場等の不特定多数が集まる場で実験的に販売したり、ソフトウェアであればオープンβテストを行ったりすることで、予めユーザの反応を見ることができます。この時に使用感についてのアンケートを取ったり、売れ行きのデータを収集した上で、これらを分析して正式販売に備えます。特に多くの人が感じた問題点や、課題だと感じた箇所をあぶり出して修正したり、宣伝を行う上でどの客層をターゲットにするかを決めるなど、調査結果の活用方法は多岐にわたります。

また、ビッグデータを利用した調査も、定量調査に分類できます。小売業者が全国各地の店舗における売上情報を収集し、売れ筋商品を調査したり、売上の多い地域を特定するなどの分析を行います。これによって、需要のある商品については仕入れる量を増やしたり、来店客の多い地域には店舗を増やすなどの施策を行う判断が可能です。

2つ以上のビッグデータを絡めた調査を行うこともできます。例えば、スマートフォン向けのゲームアプリでは、プラットフォームごとのダウンロード数、そのゲームへの課金額、ゲームのアクティブユーザ数、ゲーム内での行動データなどを収集します。こうして集められたデータから、売上とゲーム内イベント等の因果関係を明らかにしたり、アクティブユーザの増減の原因などを分析します。こうして得られた調査結果が、ゲームの運営における判断材料や、コンテンツ展開の方針を決める上での指標として活用されます。

定量調査の手法で行われた調査結果は、上記のように多数の活用方法を見出すことができます。経営方針を定める上での指標や商品を改善する手がかり、流通をコントロールする際の基準などを決める上で、定量調査は強力な武器となるのです。

定量調査は「結果」の調査である

定量調査は、様々な事象を数値化したデータとして収集します。こうして集積されたデータは、言わば調査対象の「結果」が集まったものです。商品を販売した「結果」売上はこうなったというような形で、因果の「果」の部分が可視化されるのが定量調査なのです。この結果を上手くフィードバックすることが、定量調査をマーケティングに活かすための鍵となります。

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